- COLUMN
部位の特徴について – 後編 – Porkology vol.4
豚肉に関するさまざまな情報を管理栄養士の視点からご紹介する「Porkology」。第3~4回は、豚肉の部位について解説しています。
前回の第3回目は、メジャーな豚肉の部位の特徴をご紹介。第4回目である今回は、豚肉の部位のなかでも量が取れにくいがゆえにマイナーな、ホホ、ネック、ウデ、スネ、豚足に焦点を当てて特徴を深堀りしていきたいと思います。
この5つの部位はスーパーなどで巡り合う機会も少ないですが、どれも独特な旨みがあり栄養も豊富で、見かけたらぜひ活用していただきたい部位です。今回、マニアックな豚肉の部位を知ることで、より豚肉を楽しめるようになりますよ!
さらに、豚肉を使ったローカルフードも紹介するので、チェックしてみてくださいね!
ホホ
1頭の豚からとれる量がごくわずかで、希少部位であるホホ肉。「コメカミ」や「カシラ」などの別名を、焼き鳥屋などで聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。 ホホ肉は、適度に動くため脂質が少なく、筋肉が多めで弾力のある食感です。独特な食感を楽しむためには、焼いて食べるのがおすすめ。長時間の煮込み料理にも適しており、シチューなどにすれば旨みが溶け出したスープまで美味しくいただけます。 鮮度が落ちるのが早いため、一般消費者向けのスーパーではあまり見かけません。もし見かけることがあれば、ぜひ料理にチャレンジしてみてくださいね。
- 脂質が少なく弾力のある食感
- 亜鉛、コラーゲン、カルシウムが豊富
- POPULAR RECIPES
- フランスのブイヤベースやイタリアのカルボナーラ、ポトフ、煮込み、ラビオリなどがあります。これらは、豚のほほ肉の風味を最大限に引き出した美味しい料理です。
ネック
ネックは豚の首周りの肉のことで、豚トロとも呼ばれています。豚トロは焼肉屋でも見かけることが多く、食べたことがある方も多いのではないでしょうか。 ネックは希少部位で、豚1頭につき300gほどしかとることができません。脂身中心の部位なので、豚の旨みとジューシーさを存分に楽しめます。脂が多くとろけるような食感が魅力ですが、焼くと歯応えを楽しめる部位でもあります。 脂質が多くカロリーが高いため食べ過ぎ注意ですが、栄養素は豊富。高タンパクでビタミンB群、鉄分、亜鉛なども含まれています。
- 脂が多くとろけるような食感
- たんぱく質、鉄分、亜鉛が豊富
- POPULAR RECIPES
- シチューや煮込み、カレー、焼き肉、肉じゃがなど、様々な料理に利用されます。豊かな味わいと食感が特徴の代表的な豚肉料理です。
ウデ
ウデは、「豚かた肉」と呼ばれることもある部位です。前足にあたる部分なので、筋肉がよく動く分、締まった肉質が特徴。脂肪は少ないですがほどよく含まれており、旨みが強いため美味しくいただけます。 特徴的な食感と深い味わいから、豚ウデ肉は多くの料理で重宝されています。赤身が多めで肉質はやや硬めですが、長時間煮込むことで柔らかくなるのもポイント。煮込み料理にウデ肉を用いることで、ほろほろと柔らかくなります。 ウデ肉は、スーパーでは切り落とし肉やこま肉、ひき肉などの形で売られることも多い部位です。旨みが強いので、こま肉であれば野菜炒めや豚汁などに使っても美味しくいただけるでしょう。
- 脂身が少なくやわらかい
- 亜鉛、コラーゲンが豊富
- POPULAR RECIPES
- 炒め物、煮込み、カツレツ、焼肉、しゃぶしゃぶなど多彩な料理に適しています。風味豊かでジューシーな特性を生かした料理が楽しめ、日本料理から世界の料理まで幅広いバリエーションがあります。
スネ
スネは豚の足の先端部分のお肉です。歩行により筋肉が発達しているため脂肪が少なく、筋肉質で硬めの肉質。味わいは独特で、さっぱりとしています。 筋肉質であることに加え、筋が多いのもスネ肉の特徴です。そのまま焼いて食べると硬さが際立ちますが、煮込むと柔らかくなります。スネ肉を煮込むと柔らかくなるのは、豊富に含まれているコラーゲンによるもの。煮込むことでコラーゲンが溶け出し、料理にコクと深みを与えてくれます。 スネ肉を長時間煮込む料理には、ブロック肉が使用される傾向があります。シチューや煮物のほか、ラーメンのスープに用いられることも。また、ひき肉の材料になることもあります。まとまりやすくコクや深みが出るので、ハンバーグに使用しても美味しくいただけるでしょう。
- 脂肪が少なくさっぱり
- 煮込むとコラーゲンが溶け出しコクと深みが味わえる
- コラーゲンたっぷり
- POPULAR RECIPES
- 低温で長時間煮込むと柔らかく、風味豊かな肉となり、濃厚なソースと絶妙な相性を魅せます。シチューやカレーの具材として、深い味わいと食べ応えのある料理に仕上げることができます。
豚足
豚足はその名のとおり豚の足であり、スネ肉よりもさらに足の先端を指します。よく動かす前足のほうが赤身は多く、後ろ足には脂が乗っている傾向があります。もともとは沖縄県や奄美地方など限られた地域でしか食べられていませんでしたが、現在では全国的に人気が高まり、飲食店でも豚足を使った料理が食べられるようになりました。 煮込み料理に適していると言われ、長時間煮込むとぷるぷるの食感になりますが、それは豚足にコラーゲンが豊富に含まれているから。国によっては美容食として食べられているほど、豚足にはコラーゲンが豊富です。 また、代表的な煮込み料理だけでなく、焼いても美味しいのがポイント。焼くと外側がパリッとしますが中はとろとろになるので、食感のコントラストを楽しめます。
- 長時間の煮込みでコラーゲンがプルプルに
- 焼いても美味しい
- コラーゲンが豊富
- POPULAR RECIPES
- 主にスープや煮込み料理に使用され、軟骨や皮膚の特有の食感を楽しむことができます。日本では豚足煮(とんぼに)として煮込んだり、中華料理では豚足の煮込みや焼き豚足が人気です。
豚肉は、ローカルフード(郷土料理)にも多く使われている食材
ここではアジアの観光地で食べられる豚肉を使ったローカルフード3つご紹介したいと思います。部位によって味や食感が異なる豚肉は、地域の料理を支えています。
- てびち
- 1つ目は日本の沖縄県で食べられる「てびち」。てびちと聞くと、日本の方はすぐに「沖縄で食べられる豚足の煮込み」と思い当たります。 ですが、元々は豚足に限らず、肉を使って醤油味で煮込んだ料理を沖縄では「てびち」と呼ぶのだそうです。だから、多くの日本人が「てびち」と聞いて思い浮かべる料理は「足てびち」と呼ぶのが正解なのだとか。
- カオカームー
- 2つ目はタイの「カオカームー」。カオカームーは、八角やシナモンなどで煮込んだ豚足をご飯の上にかけた料理のこと。タイ語で「カオ」はご飯、「カー」は足、「ムー」は豚を意味します。スパイスは入っていますが辛くないため、辛いのが苦手な方でも安心して食べられます。
- バクテー
- 3つ目はシンガポールやマレーシアで親しまれている「バクテー」。バクテーは漢字で「肉骨茶」と書き、「肉骨」は豚肉、「茶」はスープを意味します。骨付き肉をニンニクや漢方、胡椒などのスパイスで煮込んだ料理スープ料理で、白米にバクテーのスープをかけて食べると絶品です。
今回紹介した3つの料理のように、観光地として人気の地域で豚肉を使ったローカルフードが愛されていることもあります。観光であまり馴染みのない地域や国を訪れた際は、豚肉を使ったローカルフードも食べてみてくはいかがでしょう。
豚肉そのものに焦点を当ててご紹介する「Porkology」。 今回は豚肉のマイナーな部位に注目し、各部位の特徴や味わい、含まれる栄養素、それぞれに適した料理をご紹介しました。部位ごとに適した調理方法で料理をすることで、何倍も美味しくなることがお分かりいただけたら嬉しいです。今まで知らなかった部位にも、機会があれば挑戦してみてくださいね。
また次回も、どうぞお楽しみに!
Editor
牧田 淑美
MAKITA Yoshimi
管理栄養士
中食会社の商品開発や特定保健指導などを経験。
豊富な管理栄養士としての現場経験の傍ら、コラム執筆や栄養計算に携わる。
健康課題のある方へのメニュー制作を得意とする。